右の眼窩

薄暗くて狭いところ

日記 2018/09/14

 はてなブログから「そろそろ更新しない?」というメールが来たので日記を書く。
 今月、生まれて初めて精神科へ行った。
 
 少なくとも十年死にたがって生きてきて、でもまあ死にたいながら死なずに(あるいは死ねずに)生きてきて、もう大丈夫だろうと思っていた。ときどき頭の七割が死にたいで占められるだけだし、実際に死ぬわけでもないし、自殺未遂だって起こしたことがない。大丈夫、死ぬ度胸がない人間は死なない。そのように思って生きてきた。
 それが今月の頭、数日ほどとんでもない自殺願望の嵐にごうごうとさらされて思い改めた。これは病院に行かなくてはならない。なんかこう、やばい。歳を重ねていろんなものを見て、未来へのぼんやりした期待みたいなものがほぼ限界まですり減っている。知らないものを支えにして足を踏ん張ることがもうできないかもしれない。
 十年も死にたがって生きていると、当然何度かは「病院にかかるべきではないか」と考えたことがある。考えるだけで実行に移したことがないのは、遠いとか多くて選べないとか平日の昼間に病院になんて行けないとか電話が嫌いで予約できないとかそのへんの問題だ。精神科に罹るためには
1. 「精神科」「心療内科」「メンタルクリニック」「神経科の違いを弁別し、どれに罹るべきか見定める
2. 病院を選ぶ(通いやすさは重要な指針である)
3. 予約の要否を確認する
4. 予約が必要であれば電話をかける
5. 必要であれば仕事を調整する
くらいのステップがある。わたしはだいたいいつも1で挫折してきた。そもそもそこの弁別がよくわからない。取り敢えず睡眠障害摂食障害も出ていないから心療内科は違うのか? などと見当をつけてみるものの、すぐにぐったりして匙投げてしまう。総合診療科がほしい。もっと言えば一粒飲んだら頭がスッキリして死にたさが消えてハッピーになってパワーみなぎるみたいな薬がほしい。ブラック企業はびこる現代日本覚醒剤が合法化されたらどんな地獄があるかと思うと合法化してほしいとは言えないけど。レッドブルのテンションで覚醒剤が配られる深夜オフィス。
 あと少し話は戻るんだけど腰痛に関してもどこに行くべきか悩んでいるので「整体」「整骨」「整形外科」「マッサージ」「カイロプラクティック」「エステ」あたりの区別もはっきりしてほしい。いや整形外科は外科ってついてるのでたぶんお医者さんの管轄なのだろうけど、なんとなくどれも対処の名前に見えて、この腰痛の原因を判定して正しい施術を行える場所へ導いてくれる総合診療科がほしい(要はただの不精)。しかし胃痛ひとつ取ったって原因が内科てきなものなのか精神科てきなものかなんて素人に判断させるのはおかしいじゃないか?
 とはいえ今回は本当にやばいかもしれないと思ったので兎にも角にも「精神科」で検索、一番近いところに電話を入れて「出来るだけ早く」と指定して予約を入れ、仕事は無理やり休んで診療を受けた。症状:気分の落ち込み。
 お医者さんは小さくてさっぱりして痩せぎすで乾いた感じの男性だった。三十分くらい問診を受けて、抗鬱剤を出しますので飲んでみてくださいと言われて帰ってきた。抗鬱剤クロミプラミンとかかと思ったらSSRIだった。選択的セロトニン再取り込み阻害薬。無難で妥当だ。とはいえ「選択的再取り込み阻害」であるからには生産はしなくてはならないのかもしれない。
 カレーを食べると腸内でセロトニンが生成されるけれどもその生成されたセロトニンが脳内物質になることはないしスズメバチの毒はセロトニンだけどスズメバチに刺されたからといってそのセロトニンが脳内物質になることもない。セロトニンの分泌に何が必要かって「バナナ食って全裸で太陽に向かって走る」みたいな、たぶんそういうのだ。私の部屋は四階で、周りは墓地なので人の目もない。窓は南向きだし、あとはルームランナーがあれば「全裸で太陽に向かって走る」は達成できるかもしれない。前向きに検討してみよう(大嘘)。
 
 二回目の通院で投薬を倍量にされてちょっとびっくりしたんだけど調べたら前回の処方が成人使用量の半分だったっぽくて効きが悪いから増やされたんじゃなくて副作用が出てないから適量で出されたって話っぽい。バファリンを試しに一錠で出されたとかそういう話だと理解した。
 
 それとは別件で、私の大事な大事な友だちが今月誕生日なので例年通り「誕生月おめでとう〜」とメールしたら(※正確な日付は覚えていないので誕生月でメールする)返信がなくていよいよ死んだかと思ったのが今週頭の話。何しろネット発端の付き合いで共通の友人もなく、お互いに実名を公表してはいるけどそれが本当かどうかもわからないくらいの付き合いで、果たしてこいつが死んだことを私は知りうるのか? とぐるぐる考え込んでいたらどうも体調を崩していたらしい。一週間程度返事がなかっただけでメンがヘラるのも投薬で収まってくれるといいんだけど。
 付き合いは十年くらい、会ったのは二回、でもだいたいなんでも話せる友だち。私が死にたい人間だということを、死にたくなり始めたほとんど当初から知っている友だち。彼がいなくてもきっと生きていけるし、そうじゃなかったら怒られるだろうと思うのだけど、彼がいない世界で何もかも平気なふりをして生きていく自分はちょっと想像したくない。大事なものを失ってなお生きていける自分を直視できるほど私はまだ成熟していない。