右の眼窩

薄暗くて狭いところ

2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

サルベージ・2

曰く。 誰にでも夢を見る自由はある。 理想の自分。理想の快楽。理想の未来。 理想の他人。理想の恋人。理想の別離。 誰にでも安い夢を見る自由はある。 だが、その大半は悪夢だ。 理想の自分というものについて夢想する時、そこに自分は存在しない。生まれ…

サルベージ・1

十代の頃からあった厭世感が歳を重ねるごとどんどん強くなって別に死にたいわけじゃないけどそれ死でしか解決できないよねみたいな種類の歪みが自分の中に溜まっていって結果的に死にたいみたいな感じになる。 例えば人の感情の機微がよくわからないとか年齢…

わたくしが死ぬことに理由はありません。わたくしが死ぬことに、人様に誇れるような立派な絶望など何もないのです。お天道さまに背くような罪も、わたくしを殺しうるような凄絶な恋も、裏切りも、病も、何かの確執も、あるいは社会問題になりうるような酷使…

私はこと子に泣いてほしかった

江國香織さんの「流しのしたの骨」を読了してそろそろ数ヶ月、私なりに違和感の正体をこねこね考えていたのですけど、あれはたぶん「あの家族が破滅しなかったこと」に対する違和感なのだと思う。 まっとうっぽい理屈をこねればチェーホフの銃みたいな、「仲…