右の眼窩

薄暗くて狭いところ

システムのテスト用に何も考えず書いた文章

 彼女が沈痛な面持ちで「話がある」と言い出したのですわ別れ話だろうかと思いながらついていってみた彼女の部屋で、彼女は引き続き沈痛な面持ちで「背中に羽が生えた」と言った。
「ついに?」
「ついにって何」
「いや、なんでもない」
 彼女は天使みたいに可愛い女の子だから、羽が生えていても何ら不思議ではない。いや人体の神秘てきな意味で不思議ではあるのだけど。僕はとりあえず別れ話ではなかったことに胸をなでおろし、「でも全然そうは見えないよ、背中」と言った。
「見る? っていうか見てくれる?」
「ちょっと心の準備が」
「他の誰にも言えないんだってば」
「うん、見る、見るけどこう、うまいこと隠してね、胸とか」
「今更……?」
 いまさらでもなんでもだ。慎みを思い出してくれ。
 彼女は僕に背を向けて座り、ぷちぷちとボタンを外してシャツを脱いだ。その背中には確かに羽が生えていた。羽っていうか――
「……こっち?」
「うん」
 羽っていうか、びっちり羽毛が生えているのだった。飛べそうなやつではなく、あったかそうなやつが。
「今年はダウンコートいらないかもね?」
「言うに事欠いてそれか」
「いや……羽って羽だと思ってたら羽だったから……(??)」
 自分でも何を言ってるのかわからない。
 手を伸ばして触ってみると、羽毛はふかふかしてさらさらして、なんかこう、とても眠たくなる種類のものだった。うーん危機感を引っ張り出すことができない。