右の眼窩

薄暗くて狭いところ

「白銀の墟 玄の月」二巻までの感想(というか悲鳴)

 十二国記。いま「白銀の墟 玄の月」の二巻まで読んで絶望してるんですけど、その反面「今のこの感情を書き出しておいたら全部読み終わってから面白く読み返せるぞ」と閃いたので書いておきます。まだ結末を知らない人の絶望ってほら、結末知ってから見るとすごく面白いから(救われて笑い飛ばせると信じたいがための行動でもある)。
 ネタバレになるので二巻読み終わっていない方は以下読んじゃだめです。

 十八年(嘘、初めて読んだ時期を考慮すると十年くらい)お待ち申し上げた主公が身罷られたかもしれないという事実に顔を覆い膝をついています。白髪に赤い目………………。
 静之を責める気はない。到底責められない。無理しんどい。
 これはもうあちら側が敵だというところに賭けるしかないのではないか。李斎は誘き寄せられたのだと。主公の髪と目の色くらいなら誰でも知っているだろう(少なくとも兵卒なら容姿についてくらい見聞きするんじゃなかろうか)(文州だし民でもうっすら知っていておかしくないのでは?)し、遺体もなくそれを言うだけならば誰にだってできるのだろうし。
 向こうの言い分である「鎧を死体から剥いだと言っていた」とか普通に怪しいので嘘なんじゃないかなー。どうかなー。嘘であってくれないかなー……驍宗さま……

 とりあえず今かなりしんどいのだけど、でもじゃあどうなってほしいか? っていうとそれも思いつかない。阿選は泰麒を二度斬った、それだけが確実で、何を憂い、何を願い、あるいは何を欲して凶行に至ったかがわかっていない。
 冬栄の頃に戻れたらどんなにいいか、あのままあの場所で主上と宰補が、正頼が、李斎が潭翠が巌趙が阿選が、みな力を合わせて国を運営してくれていたらどんなによかったか、でも主上が戻られるなら阿選は戻れない、阿選が践祚するなら驍宗は……。うええやばい。正直、阿選が泰麒を斬ったのを目の当たりにしていても、まだ阿選を恨みきれない自分がいる。何かあったんじゃないか、ちょっとでも理解しうる理由があるんじゃないかと思っているところがある。でもそれがあったところで、行き着く先は華胥の幽夢のような気がする……。
 阿選が禅譲するなら華胥の幽夢と同じところに落ちちゃうので、同一シリーズでその結末二回やるかな?ってのが少しあって、でもじゃあどうすんのよで無限ループ。というか李斎……一途さって側面としての浅慮をどうしても含んでしまうので李斎が救われる道が見えねえ……主上は生きておられるの一点全賭けで生きてきた李斎が救われる道……??
 ていうかこれで阿選に某かの理があった場合まじで李斎が救われない。今のとこ阿選も救われてない感じするけど。ただなあ、正直ここからやっぱり阿選が悪い! 超悪い! みたいな方向には転がらない気がするんだよな……。阿選が救われる道も、阿選を弑して生まれるものも何もないような気がするんだよ……助けてくれ楽俊……(今回無関係のネズミに何を願っているのか)
 あと今のところ、泰麒が額づいてはいないのだよな。阿選を王に指名してはいるものの、例の「主命に背かず御前を離れず」をやっていない。だからやっぱり泰麒の「阿選が王」は欺瞞じゃないかと思ってるんだけど、どうなんだろう。王位外にはけして膝を折らない生き物だからその描写があれば決定的だったけど。

 華胥の幽夢で思い出したんですけど、戴国の宝重ってまだ何も出てないですよね多分。王宮の奥にいる、あの傀儡のような人々、あれって宝重の影響を受けた結果だったりするのかしら。践祚する前の陽子が水禺刀の暴走で苦しんだように、戴国の何かが暴走している?

 十二国記、しんどい展開は数あれど、取り敢えず今まで正義が負けたことはないしどんな形であれ悪は蔓延らないんだけども、誰が悪なのかまだ見えないからつらい(つらい)

 そういえば三千年くらい前に「先王を慕わしく思い無二としていたはずだったがいざ王が崩御して新王に相見えてみたら同じように慕わしい気分が湧いてきて絶望する麒麟」の二次創作を 読んだのだったか書いたのだったか なんだか記憶に引っかかるものがあり もう一度読みたい気がするけど自分で書いたんだとしても誰かの作品を読んだのだとしても見つけられる気がしない