右の眼窩

薄暗くて狭いところ

日記 六月十三日〜十五日

六月十三日
 相談ごとのストックがいくつかある。そんなに困っているわけではなく、そんなに難しいわけでもない。誰かに「何か困っていることはある?」と訊かれたときに少しはにかみながら答える用の「困りごと」は、大抵の場合、苦笑いとともに受理される。それくらいのことはいつでも言ってくれていいのに。今訊かれて思い出したんです。普段はあまり困っていないので。そのような親愛の手続き。同時に私を「少し間の抜けた、基本的には善良な人」と評価させるためのヴェール。ほとんど常に頭の中で繰り返している罵詈雑言は、いざとなったら少しも出てきやしない。
 
六月十四日
 気分がひどく塞ぐ。仕事を認められて、誉められて、それで落ち込んでいる。わけがわからない。わけがわからないのではない。筋が通らないから持て余しているだけだ。私は本当は貶められ見下されていたい。頭のおかしいだめな人間だと言われていたい。ぐずぐずの土台に無理やり乗せている大人の人格が重くてたまらない。常に潰れるギリギリでいるのに、誉められるということは「まだ乗せても大丈夫だよね?」と確認されることと違わない。
 
六月十五日
 うっかりしてて部屋にチョコミントアイス以外の食物が無かったのでカフェでモーニングを食べるべく喫茶店に入り注文の列に並んでいたら後ろ(列と平行に表示されていたメニューを見ていたため向き的には横)に並んだおばあちゃまと目が合っておばあちゃまは私を見てにこっと笑った。反射的に笑み返す。ちょいちょいと手招きされる。さては視力が悪くてメニューの字が読めないのかな、どれ矯正視力両目1.0の若者が助けてやろうなと思って顔を寄せたら「あんた肌がきれいねえ」と言って頬をぺたぺた叩かれた。びっくりして「今日ちょっと寒いですからね」とまったく噛み合っていない返答が出た。
 まあね、それこそ器量は良くないけど年齢の分だけ肌はきれいですかね。急にほっぺた叩かれたのも別にいいです、近所の八百屋のばあちゃんは「あんた最近ちょっと痩せたんじゃないの!このへんとか!」と言いながら脇腹掴んできましたからね。お年寄りというのはなんで初手から親戚の距離感で来るんだ。田舎だからか?
 
 どうでもいいのだけど何度見ても「〜〜したく。」「〜〜でして。」系の構文は本当にイラッとくる(末尾の句点が連続すると倍ドン)