倫理がわからないという話
寝付きが悪いあまり希死念慮に沈んだ思考が最終的に「種の繁栄という観点から見て人間の脳には無駄な機能が多すぎるのでは?」という考えに至ったのでその顛末を書く。
動物の基本原理は生存と種の繁栄だ。少なくとも人類は現在のホモ・サピエンスという形状を形成するにあたり、その二点を重視したはずだ。いやもちろん遺伝子的な話なので個々人が認識していたかどうかは全く別の話だけど。
その中で、腕力やら脚力、顎や爪、羽やら何やらといった「生存に有利なもの」を持っていなかった人類(ここで言及する「人類」はおよそ「類人猿」を指す)が獲得したのは言葉だった。ネアンデルタール人とホモサピエンスの生存を分けたのは喉仏の位置。ホモサピエンスはそれが低い位置にあったために複雑な発音を獲得し、ひいては複雑な言葉でもって情報の伝達という面で優位に立った。
ここまではいい。言葉は生存に有利。複雑な情報伝達は生存に有利。あとたいして強くない生き物は群れて社会を作り役割を分担して生きるのが良い。
「群れて社会を作る」ことと「一箇所に定住すること」、それから「幼児期が非常に長いこと」はどれが先立ったのだろうとはちょっと思う。幼児期が長いのはそれだけ安全だったからじゃないかと思うのだけど、逆に言えば幼児期が長いから安全が必要だったとも言える。まあ調べたわけじゃないので(何しろ私は暗い部屋で布団にくるまって考え事をしていたので)この辺についてマシな話ができるわけではない。調べよう。
それでせっかく群れを作り、知識を共有する言語を蓄え、あるいは知識を保存するための文字や媒体を作り、生存のために爪や牙なんかの武器よりも情報とその疎通を選択したはずの人類が、なぜこと21世紀にも至ってヒトゲノムの編集くらいのことで騒いでいなきゃいけないのか。スーパーコンピューターで計算した最強の遺伝子をとっとと作り出せばよいのでは? と思うのだけど。
少し前に蛇だか蜘蛛だかの毒を自分に注入し続けたロッカーの血だかなんだかが血清として云々(曖昧)みたいなニュースを見たのだけど、あれが安全に効率的にできるということなのでは? というのは見立てが悪いのかしら。ワクチンだの何だの生まれてから打つより最初から組み込んだらいいじゃないか。もちろん病原体やそのワクチンは日々発見され開発されているのだからアップデートは必須だろうけども。
私はずいぶん長いこと「人工的な生命の創造と合法的な安楽死が叶ったところが人権のゼロ地点」と主張しているのでこのあたりは結構甚大な齟齬が発生しているっぽい。でも実際のところ、人口だってヒトゲノムだって操作できるに越したことはないのだし、遺伝子の交雑だっていちいちセックスだ出産だって手順を踏むよりよほど手っ取り早い。この辺については「生まれたときにDNAの検査とDB保存を義務化した方がいい、警察の操作だって楽になる」と本気で思っているクチ。
ぶっちゃけ倫理というものをいまいち理解していない(理解していない自覚があるので基本的にはこういう話を現実の誰かにすることもない)(沈黙は金)ので人間は何をごちゃごちゃ騒いでおるのだ……? てき長老ドラゴンてき混乱に陥っている。そもそも親(となる人物)の勝手な判断で命一個をどうこうしようっていうんだから出産と殺人の違いもよくわかっていない。命を作るか壊すか、ベクトルが真逆向いてるだけで根っこは同じだと思うのだけど。そこ別に善悪を分けるほどのものでもなくない? 殺人が悪なら出産だって十分に悪でしょ? みたいな。私はどっちも別に悪だとは思っていない。どちらにもそれなりの罰はあるのだし、好きにすればよい。
まあともあれ人間の無駄にでかい脳みそは種の保存と存続だけで満足するわけではないので知的快楽というものが必要なのだろうし、だったらなおのこと引き継ぎとか非効率にもほどがあるので個体の寿命をガンガン伸ばす方向に動いた方が効率がいい。
という辺まで考えて、「結論が根源に至ろうとする魔術師だな……っていうかほぼ衛宮矩賢だな……」と思って考えるのをやめた。ようやく寝付いて一時間くらいでサイレンに起こされ、その後またしばらくゴロゴログネグネしてたせいでとてもねむい。
ところで人間が持つもうひとつの非効率、「死への強すぎる恐怖」というのはどこから発生したのだろうか?
あるいは言葉による感情の伝達が可能になった弊害だったりするのだろうか。これも生命として大きく歪んでいる。
※この文章は昨日書きました。
昨日あまりに寝つきが悪くて思考が死にたみに沈んだ挙句「種の繁栄という観点から見て人間の脳には無駄な機能が多すぎでは?」という考えに至ったことを思い出した
— 豆崎豆太@行くぜカクヨムコン (@qwerty_misp) December 2, 2018